特許出願による発明の保護、営業秘密としての発明の保護

会社内で行う発明発掘・発明創作活動、その過程での特許調査についてこれまで説明してきました。
今回は、発掘・創作した発明を、特許出願によって保護するか、あるいは特許出願せず、営業秘密や、先使用権(特許法第79条)などで保護するか検討・判断する際のポイントについて説明します。

A.特許出願は社会に公表される

特許出願で特許庁へ提出する書類(明細書、特許請求の範囲、必要な場合の図面)には、特許権の取得を希望する発明の内容を明瞭・明確に記載すること、記載されている通りに行うことで特許権取得を希望している発明を誰でもが再現できる程度に詳細に説明することが要求されます。産業の発達という特許法の目的から要請されるものです。
特許庁は受け付けた特許出願の内容を秘密に保持しますが、出願日から18ヶ月(1年6月)経過した時点で、それ以前に取り下げられている、等の事情が存在しない限り、特許出願人に関する情報(名称、住所)などと共に特許出願の内容を社会に公表します。公開特許公報を発行して誰でも閲覧可能にし、特許庁のJ-PlatPatにアップされてインターネット上で誰でも閲覧可能になります。

B.営業秘密は社会に公表されない

ノウハウなどの営業秘密は、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(不正競争防止法第2条第6項)ですから、そもそも、社会に公表されていないことを前提にしています。
先使用権(特許法第79条)は、特許権者(他社)の特許出願が行われるより前からその発明の事業の実施あるいは、事業の実施の準備を行っていること等が認められることで、特許権者から「特許権侵害に該当する」等の権利行使を受けた場合にも、引き続き事業を継続できるとするものです。この先使用権も、社会に公表されていないのが一般的です。
これら社会に公表されない営業秘密、先使用権(特許法第79条)によって保護を図るのか、内容がいずれ社会に公表されて同業他社が知ることになるのを前提とした特許出願で保護を図るか、検討することになります。

C.一般的な判断基準(1)

次のような場合には一般的に特許出願を行うべきと考えられます。

ア.いずれ同業他社もたどり着くであろうと思われる技術

発明発掘・創作活動、特許調査などを通じて、特許出願を行うに足ると考えられた技術が、同業他社であっても通常に技術開発を行っておれば、いずれ到達・開発し得る技術であろう、と思われるものである場合。
このような場合には、同業他社が先に開発を行い、先に特許出願をすると、特許権取得されて自社の実施が不可能になることがあり得ます。そこで、特許出願をして特許での保護を図る方が望ましいことになります。

イ.市場に提供する製品を分解・解析することで把握できる技術

発明発掘・創作活動、特許調査などを通じて、特許出願を行うに足ると考えられた技術が採用された製品が市場に投入された際、その製品を分解・解析することで採用されている技術内容を把握できる場合。
このような場合には、開発した商品を市場に投入することで技術内容が他社の知るところになってしまうわけですから、予め特許出願をして保護を求めることが望ましいことになります。

D.一般的な判断基準(2)

物を製造する方法について特許取得できた場合には、その製造方法を使用して物を製造する行為だけでなく、その製造方法を用いて製造した物を販売する行為などにも、原則として特許権の効力が及ぶことになります。
一方、検査方法のような、いわゆる単純方法と呼ばれる発明の場合には、その方法を使用する行為に対して特許権の効力が及ぶだけであって、物を製造する発明に与えられる上述した効力はありません。
そうすると、検査方法のような、いわゆる単純方法についての発明であって、その方法を採用していることや、その方法の内容を同業他社が把握することは困難である場合、その方法が同業他社によって使用されているかどうかを調査・把握することが困難である場合には、特許出願を行わずに、営業秘密として保護を図ることが考えられます。

E.総合的な検討・判断

特許取得を希望する発明(技術内容)を誰でもが再現できる程度に詳細に記載して特許出願を行う必要があるといっても、記載するものは特許出願の時点で把握している実施例、実施形態になります。他方、発明は、「技術的思想の創作」という抽象的・概念的なものですから、特許請求する発明によっておさえることのできる効力範囲は、特許出願の際に記載する実施例、実施の形態に限られません。
特許権での保護を受ける場合には、国(特許庁)が審査を行って独占排他権(特許権)が付与され、その内容が国(特許庁)から特許公報で公示されています。このため、相手の侵害行為と、それが特許権の効力範囲に属すること、等を立証するだけで権利侵害行為の排除が可能になります。
一方、社会に公表されていなかった営業秘密などの場合には、相手の侵害行為などを主張、立証する前に、保護を受け得る営業秘密であることや、先使用権を有していることを、最終的には裁判所が納得するように、主張・立証する必要が生じます。

中小企業において特許権の取得は、ヒット商品の誕生、企業業績の向上、信用力の獲得、新規顧客の開拓などに関係することが認められています。社内における発明の発掘・創作活動は、市場やユーザー・顧客のニーズの収集・把握、同業他社の技術動向の把握を伴うので、これらによって会社の技術力・開発力を高め、その結果の特許出願によって技術部門・開発部門の意欲向上を期待できます。
また、同じ発明については一日でも先に特許出願を行っていた者に特許が与えられるという先願主義(特許法第39条)の下、自社で実施する技術について特許出願を行っておけば、その日より後に誰かが行った特許出願に特許が成立し、自社が実施している技術に対して「特許権侵害に該当する」等の権利行使を受ける危険が少なくなります。
そこで、特許出願によって保護するか、あるいは特許出願せず、営業秘密や、先使用権(特許法第79条)で保護するかは、単純に、上述した一般的な観点からだけで判断できるものではありません。市場や、同業他社の動向、発掘・創作した発明の特質などを総合的に考慮した上で判断することになります。

次回は、営業秘密や、先使用権(特許法第79条)での保護を図る場合どのような取り組みになるのか説明する予定です。

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