使用商標が他人の商品等と混同するか、どのように判断するの?

不正使用取消審判(商標法第51条第1項)に関する事案を見てみましょう。
知財高判 平成24年12月26日平成24(行ケ)10187  審決取消請求事件

事案の概要

特許庁において、被告が、原告の後記の本件商標に係る商標登録に対する商標法51条1項に基づく取消しを求めました(以下、「本件審判請求」といいます。)。被告の本件審判請求について,特許庁が当該商標登録を取り消すとしました(以下、「本件審決」といいます。)。
本件は,原告が,本件審決には,商標法51条1項該当性に係る判断の誤りがあると主張して,その取消しを求めました。

裁判所の認定

本件商標
本件商標
指定商品を第30類「小麦,大麦,オート麦,スピルリナ,クロレラ,花粉,緑茶,海草,種子類,ほうれん草,朝鮮人参,アルファルファ等を主成分とした粉末状の加工食料品」(以下「本件指定商品」といいます。)とする商標(以下「本件商標」といいます。)。
本件商標は、「MultiProGreens」の欧文字と「マルチプログリーン」の片仮名文字を上下2段に横書にした構成からなリます。

使用商標
使用商標
使用商標が使用された商品は,大豆レシチン,スピルリナ,リンゴペクチンと繊維,亜麻仁粉,オリゴ糖,大麦ジュース粉末,オート麦ジュース粉末,小麦ジュース粉末,小麦の芽の粉末,アルファルファジュース粉末,クロレラ等を原料とするものであり,本件指定商品と実質的に同一です。
使用商標は、「ProGreens」の欧文字を横書にし,その左上に「multi」との欧文字を白抜きで横書にして配置した構成からなります。

引用商標1
引用商標1
引用商標1は、大麦若葉を搾汁し,繊維を取り除いた後,エキスを低温で乾燥させ,粉末化したという被告製品に使用されています。
引用商標1は、「PROGREEN」の欧文字からなります。

引用商標2
引用商標2
引用商標2は、大麦若葉を搾汁し,繊維を取り除いた後,エキスを低温で乾燥させ,粉末化したという被告製品に使用されています。
引用商標2は、「プログリーン」の片仮名文字からなります。

裁判所の判断

1 商標法51条1項について

商標法51条1項は,「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用…であって…他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは,何人も,その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定しています。

 同項の規定は,商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し,そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨のものであり,需要者一般を保護するという公益的性格を有するものである(最高裁昭和58年(行ツ)第31号同61年4月22日第三小法廷判決・裁判集民事147号587頁参照)。

2 本件商標と使用商標の類似性について

 1個の商標から2個以上の称呼,観念を生じる場合には,その1つの称呼,観念が登録商標と類似するときは,それぞれの商標は類似すると解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照

使用商標からは、「プログリーンズ」との称呼が生ずるほか、構成文字全体に応じた「マルチプログリーンズ」との称呼も生じ、本件商標から生じる称呼の1つである「マルチプログリーンズ」と称呼が同一である以上,使用商標は,本件商標と類似すると判断されました。

3 混同のおそれについて

(1) 混同を生ずるものにあたるためには、使用に係る商標の具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との間で具体的に混同が生ずるおそれを有するものであることが必要であり、

(2) 混同を生ずるおそれの有無については,
① 商標権者が使用する商標と引用する他人の商標との類似性の程度,
② 当該他人の商標の周知著名性及び独創性の有無,程度,
③ 商標権者が使用する商品等と当該他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに
④ 商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,
当該商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきとしています。

 商標法51条1項の上記のような趣旨に照らせば,同項にいう「商標の使用・・・であって・・・他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるためには,使用に係る商標の具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との間で具体的に混同を生ずるおそれを有するものであることが必要であるというべきであり,そして,その混同を生ずるおそれの有無については,商標権者が使用する商標と引用する他人の商標との類似性の程度,当該他人の商標の周知著名性及び独創性の有無,程度,商標権者が使用する商品等と当該他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである。

① 使用商標と引用商標との類否について

 複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものである(前掲最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。

使用商標は、外観上,「ProGreens」の文字は、「multi」の文字に比して、見る者の注意をより強く引くものであるということができます。また、「multi」との語は、「多くの」、「種々の」等の意味を有するものであり、「multi」との語自体が自他商品の識別のために格別の意義を有するものではありません。そうすると、使用商標のうち「ProGreens」との文字部分は,これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできず,当該文字部分だけを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されると判断されました。
したがって、使用商標と引用商標1は,外観上類似し、「プログリーン」の8音は共通しているから、称呼においても類似し、いずれも造語であり、特定の観念を生ずるものではないから、外観、称呼及び観念における類似性からすると、類似する商標であると判断されました。

② 使用商標が付された商品と被告の業務に係る商品等との間の性質等における関連性の程度について

使用商標が付された商品と被告の業務に係る商品は,いずれも健康食品と呼ばれている分野の商品であるという点で共通性を有すると認定されました。

③ 商品等の取引者及び需要者の共通性等

被告製品は,AGA加盟の薬局・薬店において,対面販売されているが,使用商標を付した原告の商品は,インターネットを通じて一般の需要者に販売されていると認定されました。

④ 引用商標の周知著名性及び独創性の程度について

引用商標は、さしたる独創性を有するものではないとの独創性の程度の判断がなされました。
被告製品の販売開始時期は,遅くとも平成5年頃と認定されました。
引用商標は,青汁等の健康食品の取引者,需要者の間で,著名ないし周知であったとまではいえないものの,一定の認知を得ていたものということができると認定されました。

小括

上記のような販売の実情に通じていない一般の需要者にあっては、上記検討した使用商標と引用商標との類似性に照らして、 インターネット上で接した原告の商品について、被告の業務に係る商品であるとの誤認、混同を生ずる具体的なおそれがあるものといわなければならないと判断しました。

4 原告の故意について

上記「multi ProGreens」との商標の使用について,被告から引用商標に係る商標権侵害を警告されていた原告が,その商品に使用商標を使用することによって,被告の業務に係る商品との誤認,混同を生ずるおそれのあることを認識し,かつこれを認容していたものと認めることができると認定されました。

5 結論

原告の請求は棄却されました。

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