PDFリーダーは共用アプリケーションソフトウェアか?

東京地裁平成24年(ワ)16103 特許権に基づく差止請求事件を見ていきましょう。

事案の概要

本件は、発明の名称を「情報データ出力システム」とする2件の特許権を有する原告らが、被告の提供する被告サービスが上記各特許権を侵害している旨主張して、被告に対し、特許法100条1項に基づく差止請求として被告サービスの提供の禁止を求めるとともに、民法709条又は特許法102条3項に基づく損害賠償及びこれらに対する不法行為の後である平成24年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

争点

(1) 被告サービスは本件各発明の技術的範囲に属するか

(本件特許1について)
本件特許1の構成要件を分説すると、以下の通りです。

A 販売する商品の個別情報データと提供する役務の個別情報データとの少なくとも一方を記憶可能、かつ、記憶した前記個別情報データをインターネットにおけるネットワーク上に送信可能な少なくとも1つのサーバ装置を備え、
B 前記インターネットを介して前記サーバ装置にアクセス可能な多数の端末装置が、印字手段を介して前記サーバ装置から受信した前記個別情報データを出力する情報データ出力システムにおいて、
C 前記端末装置各々には、HTTP(HyperText Transf er Protocol)の記述言語に対するそれら端末装置の互換性の相違(HTTPに対する前記端末装置の機種や該端末装置のオペレーティングシステム、前記端末装置にインストールされているアプリケーションソフトウェア、前記端末装置で使用するフォント環境の相違)にかかわらず、それら端末装置が前記情報データを統一された一定の規則性に基づいて規則正しく最適なレイアウトで出力することを可能にする共用アプリケーションソフトウェアがインストールされ、
D 前記共用アプリケーションソフトウェアが、前記情報データを印字する印刷用紙における該情報データの文字数および行数、前記印刷用紙に印字する前記情報データの個数、前記印刷用紙に印字する前記情報データの文字サイズおよび文字フォントを統一された一定の規則性に基づいて規則正しく最適なレイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有し、
E 前記サーバ装置が、前記共用アプリケーションソフトウェアを前記インターネットにおけるネットワーク上に送信する共用アプリケーションソフトウェア送信手段と、前記情報データを前記共用アプリケーションソフトウェアが電子的に処理可能な中間データに変換するデータ変換手段と、前記中間データを前記インターネットを介して前記端末装置に送信するデータ送信手段とを有し、
F それら端末装置が、前記インターネットを介して前記共用アプリケーションソフトウェアを受信かつインストール可能であり、前記サーバ装置から前記中間データを受信すると、前記共用アプリケーションソフトウェアを利用して前記中間データに変換された前記情報データを前記印字手段を介して出力する
G ことを特徴とする情報データ出力システム。」とするものです。

構成要件CないしFの「共用アプリケーションソフトウェア」の充足性

裁判所は、まず、本件各特許の特許請求の範囲には、「前記共用アプリケーションソフトウェアが、前記情報データを印字する印刷用紙における該情報データの文字数および行数、前記印刷用紙に印字する前記情報データの個数、前記印刷用紙に印字する前記情報データの文字サイズおよび文字フォントを統一された一定の規則性に基づいて」「規則正しく最適なレイアウト」(本件特許1)又は「規則正しいレイアウト」(本件特許2)「で出力する状態に自動的に設定する機能を有」するものと記載されている(構成要件D)と認定しています。

これによれば,
本件各発明の「共用アプリケーションソフトウェア」は、少なくとも,
①情報データの文字数及び行数、
②印刷用紙に印字する前記情報データの個数、
並びに、
③印刷用紙に印字する前記情報データの文字サイズ及び文字フォントを、統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものでなければならない、とし、
そのいずれかの機能を欠くアプリケーションソフトウェアは、「共用アプリケーションソフトウェア」に当たらないものと解される、としました。

また、本件各明細書の記載からも、
上記の①ないし③の一部でもレイアウトが崩れた場合は、このような作用効果を発揮することができず、各販売店が情報データを製造者から郵送やファクシミリ等で取り寄せなければならなくなり、本件各発明の課題(前記(1)ア(ア)a及び同(イ)a参照)を解決することができないこととなる、とし、
その上で、被告製品に当てはめると、「アプリケーションソフトウェア」に相当するのは、

PDFファイルの作成機能を有するアクロバット等のアプリケーションソフトウェア

であり、

利用者が利用明細に係るPDFファイルを表示又は印刷する際に使用する利用者端末のリーダーは、これには当たらないものと解される。

よって、被告サービスは、本件各発明の構成要件Eを充足せず、この観点からも本件各発明の技術的範囲に属しないものと解する、と判断しました。

結論

以上によれば、その余の争点につき判断するまでもなく、本件請求はいずれも理由がないからとの理由で、これを棄却しました。

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