特許請求の範囲の記載「ことにより」を、どう文言解釈するの?

発明の名称を「Web-POS方式」とする、Web-POSネットワーク・システムの制御方法に関する特許権に基づく損害賠償事件を見ていきましょう。
東地判平成25年10月17日平成23(ワ)21126 損害賠償請求事件

争点

  • 構成要件Cに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容に関する充足性

裁判所の認定

本件特許権
本件特許権
ハイパーテキスト転送プロトコルを用いてハイパーテキストマークアップ言語で記述された初期フレーム表示制御クライアント・プログラム、カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラム及びPLUリスト表示制御クライアント・プログラムを含むHTMLリソースを供給するWeb-POSサーバ装置を備えた、
販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワーク・システムの制御方法であって、
該Web-POSサーバ装置からWeb-POSクライアント装置に対して送信された、初期フレーム表示制御クライアント・プログラムが、該 Web-POSクライアント装置において実行されることにより、少なくとも、
1) 該Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して、カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムのダ ウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される過程、
2) 該要求に基づき、Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムを読み出し、上記 Web-POSサーバ装置から該Web-POSクライアント装置に対して、上記カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムが送信される過程、
3) 上記Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して、PLUリスト表示制御サーバ・プログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると、上記Web-POSサーバ装置が、PLU表示サーバ・プログラムを起動して、PLUリスト表示制御クライアント・プログラムを生成し、上記Web-POSクライアント装置に対して、PLUリスト表示制御クライアントプログラムが送信される過程、
4) 及び、商品情報の入力毎に、それに対応するPLU情報が上記Web-POSサーバ装置に問い合わされる過程、からなり、
前記Web-POSサーバ装置のPLUマスタDB内の商品カテゴリーに対応するレコード情報に基づくPLUリスト及び同PLUマスタDB内の商品情報に対応するレコード情報に基づくPLUリストが、それぞれ、 前記Web-POSクライアント装置における商品カテゴリーが変更される毎に、また前記Web-POSクライアント装置における商品識別情報が入力(選択)される毎に、前記Web-POSサーバ装置から前記Web-POSクライアント装置にダウンロードされると共に、
該Web-POSクライアント装置においては、前記Web-POSサーバ装置から受信した商品基礎情報をタッチパネル、キーボード、またはマウスからなる入力手段を有する表示画面に表示し、該入力手段により上記表示された商品を特定する商品に関する識別情報である商品識別情報を入力(選択)し、前記Web-POSサーバ装置から受信した商品基礎情報から上記入力(選択)した商品識別情報に対応する商品基礎情報のレコードを取得して、該商品基礎情報と上記入力(選択)した商品識別情報とに基づいて注文商品明細情報を上記表示画面に出力する、
汎用のコンピュータとインターネットを用い、ハイパーテキスト転送プロトコルに基づいて通信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザのみでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムにおいて、
商品カテゴリー、メーカー、商品名及び価格からなる商品基礎情報が記憶されている前記PLUマスタDBが前記Web-POSサーバ装置のみに設けられて、
前記すべての商品基礎情報が前記Web-POSサーバ装置のみによって管理されると共に、
前記タッチパネル、キーボード、またはマウスからなる入力手段を有する表示装置において、商品カテゴリーに対応するPLUリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と、該カテゴリー内の商品名が表示される、商品情報に対応したPLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と、前記商品基礎情報と前記入力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て、
前記Web-POSクライアント装置における上記注文商品明細情報が該Web-POSクライアント装置から前記Web-POSサーバ装置に送信されることで、販売時点情報管理が行われることを特徴とする
Web-POSネットワーク・システムの制御方法。

構成要件Cについて

構成要件Cをピックアップすると、以下のとおりです。

C 該Web-POSサーバ装置からWeb-POSクライアント装置に対して送信された、初期フレーム表示制御クライアント・プログラムが、該 Web-POSクライアント装置において実行されることにより、少なくとも、
1) 該Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して、カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムのダ ウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される過程、
2) 該要求に基づき、Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムを読み出し、上記 Web-POSサーバ装置から該Web-POSクライアント装置に対して、上記カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムが送信される過程、
3) 上記Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して、PLUリスト表示制御サーバ・プログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると、上記Web-POSサーバ装置が、PLU表示サーバ・プログラムを起動して、PLUリスト表示制御クライアント・プログラムを生成し、上記Web-POSクライアント装置に対して、PLUリスト表示制御クライアントプログラムが送信される過程、
4) 及び、商品情報の入力毎に、それに対応するPLU情報が上記Web-POSサーバ装置に問い合わされる過程、からなり、

裁判所の判断

(1)特許請求の範囲の解釈

まず、特許請求の範囲の記載について、文言解釈がなされました。

 本件発明の構成要件Cの柱書及び1)ないし3)においては、カテゴリーリストプログラム(「カテゴリーリスト表示制御クライアント
・プログラム」のこと。以下同じ)及びPLUリストプログラム(「PLUリスト表示制御クライアント・プ
ログラム」のこと。以下同じ)の送信及び実行が、①サーバ装置(「Web-POSサーバ装置」のこと。以下同じ)からクライアント装置(「Web-POSクライアント装置」のこと。以下同じ)に対して初期フレームプログラム(「初期フレーム表示制御クライアント・プ
ログラム」のこと。以下同じ)が送信される(構成要件Cの柱書き前段)、②送信された初期フレームプログラムがクライアント装置において実行される(同後段)、③クライアント装置からサーバ装置に対して、カテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される(同1))、④この要求に基づき、Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリストプログラムを読み出す(同2)前段)、⑤サーバ装置からクライアント装置に対して、上記カテゴリーリストプログラムが送信される(同2)後段)、⑥クライアント装置からサーバ装置に対して、PLUリストサーバプログラム(「PLUリスト表示制御サーバ・プログラム, PLU表示サーバ・プログラム」のこと。以下同じ)の実行を指示するHTTPメッセージが送信されると、サーバ装置が,PLUリストサーバプログラムを起動して,PLUリストプログラムを生成する(同3)前段)、⑦クライアント装置に対して、PLUリストプログラムが送信される(同3)後段)、ことが記載されている。そして、上記①及び②の過程と、③ないし⑦の過程とが、「ことにより」という語により結び付けられている。

※かっこ書き内は、筆者挿入

したがって、上記①及び②のとおりの手順で初期フレームプログラムが実行されることにより、第1フレームの表示領域が確保され(中略)③ないし⑤のとおりの手順でカテゴリーリストプログラムが実行されるという過程を経る。また、上記①及び②のとおりの手順で初期フレームプログラムが実行されることにより、第2フレーム表示領域が確保され(中略)⑥及び⑦のとおりの手順でPLUリストプログラムが実行されるという過程を経ると認定されました。

(2)本件明細書及び図面の検討

ついで、本件明細書及び図面の記載を参酌しています。

上記の解釈は、本件明細書及び図面を検討することによっても裏付けられると認定しています。

一般解釈

本件明細書にも記載がないものについては、一般解釈を参酌しています。

「ことにより」という語は、一般的に、物事の間に時間的な前後関係のみならず因果関係があることを意味します。

構成要件Cの「実行されることにより」という文言解釈

 構成要件Cにいう「より」は,因果関係等を意味する自動詞「よる」の連用形であって,動詞等に連なる語法において用いられるものであるから,構成要件Cの「ことにより」が,構成要件Cの1)ないし3)の「送信される」及び4)の「問い合わされる」の各動詞にそれぞれ係っていることは文法上明らかであり,これと異なる読み方をすべき根拠は見当たらない。

被告システムの実施態様について

被告システムにおいては、第2画面のカテゴリーリストの表示領域を確保するプログラムと、(中略)カテゴリーリストを表示するプログラムが、同時に実行されている。
次に、第2画面の個別商品領域を確保するプログラムは、第3画面の個別商品リストを表示するためのプログラムではない。
第3画面の個別商品領域を確保するプログラムは第2画面の個別商品領域を確保するプログラムを使用しているものではない。

結論

よって、被告システムの実施態様は、構成要件Cに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するとはいえないものと解するのが相当である。

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